スズメバチの巣といえば、高い木の枝や立派な家の軒下に吊り下がっている光景を思い浮かべるのが一般的ですが、現場で防除に携わる人々の間では、もっと意外な場所が日々報告されています。先日、ある住宅地で発見された事例では、なんと「ガスメーターの格納箱」の中に巨大なキイロスズメバチの巣が作られていました。検針員の方が危うく蓋を開けようとした瞬間に、隙間から溢れ出す蜂の羽音に気づいて難を逃れたそうですが、こうした金属製のボックス内は、蜂にとって雨風を完璧に防ぎ、適度な温度が保たれる最高の営巣場所となってしまいます。また、最近増えているのが「床下換気口」の奥です。現代の住宅は気密性が高いため、一度内部に侵入を許すと、床下の広大な空間を利用して誰にも気づかれずに巣を巨大化させることができます。住人が異変に気づくのは、決まって「部屋のどこからか羽音が聞こえる」ようになったり、あるいは「コンセントの隙間から蜂が這い出してきた」という、末期的な状況になってからです。さらに、庭に放置された「使わなくなった植木鉢」や「子供用の遊具」の内部も、コガタスズメバチなどが好んで巣を作る場所の一つです。ひっくり返したバケツの裏側や、積み上げたタイヤの間など、人間が数ヶ月間動かしていない物があれば、そこは蜂にとって絶好の不動産物件となります。また、都市部特有のケースとして、マンションの「パイプシャフト」内や「火災報知器のカバー」の中といった、点検時しか開けないような設備内部も要注意です。これらの場所に共通しているのは、人間が普段視界に入れない、あるいは触れない「死角」であるという点です。スズメバチは非常に賢く、外敵に見つかりにくい、かつ安定した環境を鋭敏に察知して場所を決めます。ですから、私たちが自分の家や庭を点検する際には、「まさかこんな狭い場所に」という先入観を捨て、あらゆる隙間や箱状の構造物を疑ってかかる必要があります。もし一匹の蜂が特定の場所に対して執拗に出入りを繰り返しているのを見かけたら、そこには必ず入り口があり、その奥には私たちの想像を超えた場所で命の営みが始まっていると考えなければなりません。意外な場所への営巣を防ぐには、不要なものを放置せず、物理的な隙間を埋めるという、地道な環境管理が何よりの予防策となるのです。
まさかこんな所にというスズメバチの意外な営巣場所