代々続く米屋の店主として多くのお客様と接していると、毎年のように米虫についての相談を受けます。お客様は皆一様に「うちは綺麗にしているのに、どこから湧いてきたのかしら」と不思議そうに仰います。長年お米を扱ってきた経験から申し上げますと、米虫というのは決して不潔な場所にだけ現れるわけではありません。むしろ、美味しいお米があるところならどこへでもやってくる、非常に勤勉な生き物だと言えます。よくある誤解として、お米の中に自然発生するというものがありますが、それは間違いです。必ず外から卵や成虫が入ってくるのです。その経路の一つとして、意外と見落とされがちなのが「お米の袋」そのものです。お米の袋には、破裂を防ぐために小さな空気穴が開けられています。米虫の中でも蛾の仲間などは、その穴から漏れ出すお米の香りに誘われてやってきます。また、最近増えているのが、通販などで購入した際の段ボール箱に付着して家の中に持ち込まれるケースです。倉庫で保管されている間に、段ボールの隙間に潜り込んだ虫が、そのまま家庭のキッチンまで運ばれてしまうのです。お米屋としては、精米の段階で最大限の注意を払っています。最新の機械で異物を除去し、綺麗な状態でお届けしていますが、それでも自然の産物である以上、粒の中に隠れた卵を百パーセント取り除くのは至難の業です。ですから、お客様には「米虫はどこからでも来る可能性がある」という前提で、お家での保管をお願いしています。特に、古い米びつをずっと使い続けている方は注意が必要です。一見綺麗に見えても、角の方に古いヌカがこびりついていると、それが虫の温床になります。新しいお米を入れる前には、必ず容器を丸洗いして天日干しすることをお勧めしています。これだけで発生率はぐんと下がります。また、私たちはよく「お米は生鮮食品だと思ってください」とお伝えします。野菜や肉と同じように、適切な温度で管理し、早めに召し上がっていただくのが一番の対策です。どこから来るのかと犯人探しをするよりも、彼らが住み着きにくい環境を整えること。それが、お米を美味しく安全に楽しむための、お米屋からのアドバイスです。