憧れの沖縄移住を果たし、那覇市内の築浅マンションで新生活を始めて一週間が経った頃のことでした。南国の開放感に浸り、夜風を浴びながらベランダでオリオンビールを飲んでいた私は、人生で最大級の衝撃を受けることになりました。ふと足元に目をやると、そこにはこれまでに見たこともないほど「でかい」茶色の物体が鎮座していたのです。最初はクワガタか何かの迷い込みかと思いましたが、その不気味に動く長い触角と、独特の光沢のある体、そして何よりも素早い動きを見て、それがゴキブリであると理解した瞬間に全身の毛穴が逆立ちました。本土で見慣れていた黒くて小柄なゴキブリとは全くの別物です。まず大きさが違います。優に五センチメートルはあろうかという巨体は、厚みもあって存在感が凄まじいのです。パニックになりながらも殺虫剤を手に取り、射程圏内に入ろうとしたその時、さらに信じられない光景が広がりました。その巨大な物体が、羽を広げて私の顔めがけて一直線に飛んできたのです。必死で部屋の中に逃げ込み、窓を閉め切りましたが、心臓の鼓動はしばらく収まりませんでした。後で地元の方に話を聞くと、「それはワモンゴキブリだよ、沖縄じゃ当たり前さ」と笑いながら教えてくれました。沖縄のゴキブリは外から飛んでくるのが普通で、一匹見つけたからといって家に百匹いるわけではないという言葉に少しだけ救われましたが、それでもあのサイズ感と飛翔力への恐怖は消えません。それ以来、私の生活は一変しました。全ての窓には網戸だけでなく細かいメッシュの防虫ネットを重ね、エアコンのドレンホースには逆止弁を取り付け、換気扇の隙間も徹底的に塞ぎました。沖縄の夏は素晴らしいですが、その影には常にこの「でかい」訪問者との知恵比べが隠されています。夜道を歩けば、街灯の下を堂々と歩く彼らに遭遇し、公園のベンチに座れば足元をカサカサと通り過ぎていきます。移住して一年が経ち、ようやくその存在に少しずつ慣れてはきましたが、やはり夜中にキッチンの電気をつけた瞬間のあの緊張感だけは、何年経っても克服できそうにありません。沖縄の自然は豊かですが、それは人間にとって不快な生き物にとっても楽園であることを痛感させられます。あの巨大なゴキブリは、私にとって沖縄の洗礼であり、この土地で生きていくための覚悟を試されているような、そんな象徴的な存在です。
移住者が驚愕する沖縄の巨大ゴキブリ遭遇記