あれは、大学のサークル仲間と、山奥のキャンプ場へ行った時のことでした。豊かな自然に囲まれ、日中は川遊びやバーベキューを楽しみ、私たちは最高の夏休みを満喫していました。夕暮れ時、半袖半ズボンで川辺の片付けをしていた時、足元にまとわりつく、数匹の小さな羽虫に気づきました。蚊よりも小さく、黒くて丸っこいその虫を、私は手でパチンと叩き落としながら、「なんだ、この虫?」と、特に気にも留めていませんでした。それが、悪夢の始まりでした。その夜、テントの中で眠りについた私は、足首に感じた、燃えるような、猛烈な痒みで目を覚ましました。見てみると、足首の周りに、十数箇所、真っ赤な発疹ができており、異常なほど熱を持っています。痒みは尋常ではなく、掻きむしりたい衝動を、爪を立てて必死でこらえました。翌朝、事態はさらに悪化していました。赤い発疹は、それぞれが10円玉ほどの大きさにパンパンに腫れ上がり、その中心には、透明な液体が溜まった、グロテスクな水ぶくれができていたのです。歩くだけでズキズキと痛み、その見た目の醜さに、私は言葉を失いました。キャンプを早めに切り上げ、家に帰るやい否や皮膚科に駆け込むと、医師は患部を一目見て、「ああ、これはブユだね。キャンプ、行ったでしょう?」と言い当てました。あの夕暮れの小さな羽虫の正体が、吸血昆虫のブユだったのです。処方された強力なステロイド軟膏と、抗アレルギー薬の内服を始めても、その猛烈な痒みと腫れは、なかなか引きませんでした。結局、水ぶくれが完全に消え、黒ずんだ跡が薄くなるまでには、一ヶ月近くかかったと思います。この苦い経験から、私は学びました。自然の中では、小さな虫ほど、恐ろしい牙を隠し持っている可能性があること。そして、アウトドアでの虫除け対策と、肌の露出を避けることが、いかに重要であるかを、身をもって知ったのです。
あの夏のキャンプ、ブユと水ぶくれの悪夢