キッチンで、ゴマ粒のような小さな茶色い虫が大量発生。そして、時を同じくして、腕や首筋など、肌の柔らかい部分を何かに刺され、赤い発疹と、しつこいかゆみに悩まされるようになった。この二つの出来事が同時に起こった時、その「臭い虫」の犯人は、カメムシではない、別の厄介な害虫である可能性を疑うべきです。その正体は、「シバンムシアリガタバチ」です。この虫は、体長2ミリ程度のアリによく似た姿をしていますが、その名の通り、ハチの仲間であり、メスは腹部の先に毒針を持っています。そして、彼らが、なぜあなたの家に現れたのか。その理由は、あなたの家のどこかで、別の害虫である「シバンムシ」が、大量に繁殖しているからです。シバンムシアリガタバチは、シバンムシの幼虫を専門に狙う「寄生蜂」です。小麦粉やパスタ、畳などに発生したシバンムシの幼虫に卵を産み付け、孵化した幼虫は、シバンムシの幼虫を食べて成長するのです。そして、成虫となったシバンムシアリガタバチが、室内を徘徊し、人間の汗の匂いなどに反応して、誤って人を刺してしまいます。刺されると、チクッとした痛みと共に、赤く腫れ上がり、強いかゆみが数日間続きます。さらに、この虫は、危険を感じて潰されたりすると、蟻酸に似た、ツンとする酸っぱい「臭い」を放つのです。つまり、あなたがこの小さなハチに刺され、その臭いを感じたということは、その背景に、大元であるシバンムシの大発生という、より深刻な問題が隠されている、動かぬ証拠なのです。刺された患部には、市販のステロイド成分を含む虫刺され薬を塗布するとともに、本当の原因であるシバンムシの発生源（古い小麦粉や乾麺、畳など）を徹底的に探し出し、駆除することが、この二次被害の連鎖を断ち切るための、唯一の解決策となります。