澄んだ空気と冷たい水が魅力の渓流散策や山歩きは、最高の癒やしですが、そこにはブユという恐ろしい天敵が潜んでいます。多くの登山客や釣り人が、足首を無防備に晒したことで、その後の数週間を後悔と共に過ごすことになります。ブユは蚊の仲間ではなく、ハエに近い昆虫で、水質のきれいな渓流付近に生息しています。彼らの最大の特徴は、針を刺すのではなく、鋭い顎で皮膚を噛み切って吸血するという点です。刺された瞬間はチクッとした軽い痛みを感じる程度で、麻酔成分が含まれているため、その場では気づかないことも珍しくありません。しかし、吸血を終えてブユが去った後、足首には小さな出血点が見られ、数時間後には猛烈な痒みと、熱を持った硬い腫れが生じます。特に足首は皮膚が薄いため毒素の影響を受けやすく、ひどい場合には象の足のようにパンパンに膨れ上がり、歩行に支障をきたすほどのブユ結節と呼ばれる慢性的なしこりになることもあります。このブユの被害から足首を守るためには、一般的な虫除けスプレーだけでは不十分な場合が多いのが現実です。ブユにはハッカ油の匂いが効果的と言われており、高濃度のハッカ水を自作して足首周りに頻繁にスプレーするのが、ベテランの間での常識となっています。また、黒や紺などの暗い色に寄ってくる習性があるため、明るい色の長ズボンを履き、裾を靴下の中に入れる靴下インスタイルが、最も確実な物理的防御となります。もし噛まれてしまったら、毒素を薄めるためにすぐに患部を強く絞り出すように流水で洗い、抗ヒスタミン剤とステロイドの混合薬をたっぷり塗りましょう。熱感があるうちは冷やすのが正解ですが、腫れが固まってしまった後は、逆に温めることで血行を促し、毒素の排出を助けるという対処法もあります。自然の美しさを楽しみながらも、足元に潜む小さなハンターたちへの警戒を怠らないこと。それが、山や川での時間を最高の思い出で終わらせるための、経験豊かな旅人の知恵なのです。ブユの存在を忘れてはならないのは、彼らが活動する朝夕の時間帯です。その時間に合わせて足首のガードを強化し、万全の態勢で大自然に挑みましょう。