キッチンや飲食店で、小さな茶色いゴキブリが素早く走り去るのを目撃したことはありませんか。その正体は、一般的なクロゴキブリとは全く異なる生態を持つ、「チャバネ-ゴキブリ」かもしれません。体長は一センチから一・五センチほどと小型で、油断しがちですが、実はこのチャバネゴキブリこそが、ゴキブリの中でも最も駆除が困難で、厄介な害虫の王様とも言える存在なのです。彼らの恐ろしさは、その驚異的な繁殖力にあります。クロゴキブリが一生に産む卵の数(卵鞘の数)が十数回であるのに対し、チャバネゴキブリは三回から七回と少ないものの、一つの卵鞘から孵化する幼虫の数が、クロゴキブリの二十匹程度に対して、チャバネゴキブリは三十匹から四十匹と圧倒的に多いのです。さらに、卵から成虫になるまでの期間も、クロゴキブリが一年以上かかるのに対し、チャバネゴキブリはわずか二、三か月。暖かく、餌が豊富な環境下では、一年で何世代も繰り返し、爆発的にその数を増やしていきます。また、彼らは寒さに弱いため、屋外では越冬できません。そのため、常に暖かく、餌や水が豊富な人間の住居、特に飲食店やビル、集合住宅といった場所に集中して生息します。彼らは飛ぶことができず、行動範囲も狭いため、一度住み着くと、その建物内で集中的に繁殖し、コロニーを形成します。つまり、家の中でチャバネゴキブリを一匹見つけたということは、それは偶然迷い込んできたのではなく、その建物のどこかに確実に巣があり、既に何百、何千という仲間が潜んでいる可能性が非常に高い、という絶望的なサインなのです。この小さな侵略者の存在は、単なる不快感に留まらず、食中毒菌の媒介や、糞・死骸によるアレルギーの原因ともなります。チャバネゴキブリとの戦いは、時間との勝負。その危険性を正しく認識し、一刻も早く、徹底的な駆除に乗り出す必要があります。
その小さなゴキブリ、危険信号!チャバネゴキブリの恐怖