家や庭で見かける虫の卵。その多くは不快なだけで直接的な害はありませんが、中には、卵の段階から絶対に素手で触れてはならない、極めて危険なものが存在します。その代表格が、ツバキやサザンカ、チャの木などのツバキ科の植物に発生する「チャドクガ」の卵です。チャドクガの卵は、黄色い毛玉のような塊(卵塊)として、葉の裏に産み付けられています。この黄色いフワフワしたものは、メス親の体毛であり、実は一本一本が「毒針毛(どくしんもう)」と呼ばれる、目に見えないミクロな毒針なのです。卵を守るために、この毒針毛でびっしりと覆っているのです。もし、これに気づかずに素手で触れてしまうと、無数の毒針毛が皮膚に突き刺さり、数時間後から激しいかゆみと赤い発疹に襲われます。この皮膚炎は非常に治りにくく、一週間以上も辛い症状が続くことがあります。さらに厄介なのは、この毒針毛は非常に抜けやすく、風に乗って飛散することです。卵塊のある枝を剪定しただけでも、毒針毛が舞い上がり、近くにいるだけで首筋や腕などに付着して被害に遭うこともあります。チャドクガの卵を見つけた場合は、絶対に素手で触らず、ゴム手袋とマスク、ゴーグルで完全防備の上、卵が付着している葉ごと枝を切り取り、ビニール袋に密閉して処分する必要があります。また、直接的な毒はありませんが、二次的な被害を考えると非常に危険なのが「ゴキブリ」の卵鞘です。黒光りする小豆のようなこのカプセル一つから、種類によっては数十匹の幼虫が孵化します。これを放置することは、家中にゴキブリを拡散させる引き金を引くのと同じことです。その後の駆除の労力と精神的苦痛を考えれば、これもまた「危険な卵」と言えるでしょう。虫の卵を見つけた時は、「正体不明のものは触らない」という原則を徹底し、特に黄色い毛玉状の塊には最大限の警戒を払うようにしてください。
ただの卵と侮るな!触ってはいけない危険な虫の卵