自宅の軒下や庭木に蜂の巣を見つけた時、多くの人が最初に頭に浮かべるのが、「市役所や区役所に連絡すれば、無料で駆除してくれるのではないか?」という淡い期待でしょう。テレビのニュースなどで、消防隊員が防護服を着てスズメバチの巣を駆除している映像を見たことがある人も多いかもしれません。しかし、結論から先に、そして明確に申し上げます。原則として、ほとんどの自治体(市役所・区役所)では、「個人宅の敷地内にできた蜂の巣の駆除を、直接、無料で行うことはありません」。市役所の役割は、あくまで公衆衛生の維持や、公共の安全を守ることにあります。そのため、公園や街路樹、公民館といった「公共の場所」に蜂の巣ができて、不特定多数の人々に危険が及ぶ可能性がある場合には、自治体の責任において駆除が行われます。しかし、個人の住宅や、マンションのベランダといった「私有地」にできた蜂の巣は、その土地の所有者または管理者が、自らの責任と費用で対処するのが、基本的なルールとなっているのです。この事実は、多くの人にとって、少し冷たく、そして意外に感じられるかもしれません。では、市役所に連絡しても、全くの無意味なのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。市役所は、直接駆除はしてくれなくても、蜂の巣問題に悩む住民にとって、非常に重要な「相談窓口」としての役割を担っています。信頼できる専門の駆除業者のリストを提供してくれたり、駆除費用の一部を補助してくれる制度があったり、あるいは、自分で駆除する場合の正しい手順や注意点をアドバイスしてくれたりします。まずは、パニックにならずに、お住まいの自治体のウェブサイトを確認するか、担当部署(環境課や生活衛生課など)に電話で問い合わせてみること。それが、この厄介な問題を、安全かつ適切に解決するための、最も確実で、賢明な第一歩となるのです。