秋が深まり、日中の日差しが心地よく感じられるようになると、決まって、家の壁や窓、あるいはベランダに干した洗濯物に、緑色や茶色の、あの盾のような形をしたカメムシが、どこからともなく大量に現れる。この、秋の風物詩とも言えるカメムシの大量発生は、一体なぜ起こるのでしょうか。その理由は、彼らの「越冬」という習性にあります。カメムシは、寒さが厳しくなる冬を乗り越えるために、暖かく、雨風をしのげる、安全な場所を探し求めます。そして、現代の気密性の高い住宅は、彼らにとって、まさに理想的な越冬場所、最高のシェルターなのです。特に、日当たりの良い南向きの白い壁などは、太陽の熱で暖められるため、彼らを強く引き寄せます。そして、その壁にある窓サッシのわずかな隙間や、換気口、エアコンの配管の隙間など、私たちが気づかないような小さな入口から、暖かい空気が漏れ出しているのを感知し、一匹が安全な場所を見つけると、仲間を呼ぶフェロモンを出して、次々と集まってくるのです。これが、特定の家の壁にだけ、おびただしい数のカメムシが群がる、あの異様な光景が生まれるメカニズムです。また、その年の夏の気候も、秋の大量発生に大きく影響します。夏が猛暑で、晴天の日が続くと、カメムシの餌となる植物がよく育ち、彼らの繁殖が活発になります。その結果、秋になって越冬場所を探す個体の数が、全体として増加するのです。つまり、カメムシの大量発生は、「暖かく、隙間の多い家」と、「猛暑の夏」という二つの条件が重なった時に、特に起こりやすくなると言えます。彼らの侵入を防ぐためには、越冬場所を探し始める秋口から、家の隙間を徹底的に塞ぐことが、最も効果的な対策となります。網戸の破れを補修し、サッシの隙間には隙間テープを貼る。エアコンの配管の隙間をパテで埋める。その地道な作業が、不快な同居人との共同生活を、未然に防いでくれるのです。
カメムシはどこから来る?侵入経路と大量発生の謎