私たちの暮らしを支える大切な住まい。しかし、その土台を静かに、そして確実に蝕む恐ろしい存在がいます。それが白蟻です。多くの人が白蟻という言葉は知っていても、その生態や被害の深刻さについて正しく理解しているケースは少ないかもしれません。白蟻は木材を主食とする昆虫で、特に湿気が多く暗い場所を好みます。家の床下や壁の内部、浴室の土台など、普段私たちの目に触れない場所で密かに活動範囲を広げていくのです。日本で主に家屋に被害をもたらすのはヤマトシロアリとイエシロアリの二種類です。ヤマトシロアリは比較的寒さに強く、北海道北部を除く日本全土に分布しています。一方、イエシロアリはより攻撃的で、巣全体で数百万頭という巨大なコロニーを形成し、水を運ぶ能力もあるため乾燥した木材まで加害します。彼らは木材の内部だけを巧みに食べ進めるため、表面上は異変に気づきにくいのが厄か厄介な点です。壁を叩くと空洞音がしたり、床が不自然に沈んだりする頃には、被害がかなり進行していると考えられます。気づいた時には柱や土台がスポンジのようにスカスカになっており、建物の耐震性が著しく低下していることも珍しくありません。特に警戒すべきサインが、春から初夏にかけての羽アリの大量発生です。これは巣が成熟し、新たな女王と王が新しい巣を作るために飛び立つ繁殖行動であり、家の中やその周辺で多数見かけた場合は、近くに大規模な巣が存在する確固たる証拠と言えます。普通の黒アリの羽アリと見分けるポイントは、胴体がくびれていないことや、四枚の羽がほぼ同じ大きさであることです。大切なマイホームを白蟻の脅威から守るためには、まず敵の習性を知ることが第一歩です。定期的な専門家による点検を心掛け、少しでも異変を感じたら迅速に対応することが、取り返しのつかない事態を防ぐための最も確実な方法となるでしょう。
白蟻被害から家を守るための基礎知識