市役所は、個人宅の蜂の巣を直接駆除してはくれない。しかし、だからといって、住民を完全に見放しているわけではありません。多くの自治体では、蜂の巣問題に自力で立ち向かおうとする住民を支援するために、様々なサポート制度を用意しています。その中でも、特に多くの自治体で実施されている、非常にありがたいサービスが、「蜂の駆除用防護服の無料貸し出し」です。蜂の巣を自分で駆除する際に、最も重要なのが、蜂の攻撃から身を守るための、完璧な安全装備です。しかし、プロが使用するような本格的な防護服は、非常に高価であり、個人で購入するのは現実的ではありません。この、自力駆除における最大のハードルを解消してくれるのが、この貸し出し制度なのです。貸し出される防護服は、自治体によって多少異なりますが、一般的には、蜂の針が貫通しない厚手の生地で作られ、頭部を守るヘルメットと、顔面を保護するメッシュが付いた、上下つなぎの本格的なものです。これを着用することで、素人が行う駆除作業の安全性は、飛躍的に向上します。ただし、この制度を利用する際には、いくつかの注意点があります。まず、貸し出しの対象となるのは、比較的危険度の低い「アシナガバチ」の巣の駆除に限られる場合がほとんどです。攻撃性が非常に高く、危険な「スズメバチ」の巣の駆除については、自力での駆除そのものが推奨されていないため、防護服の貸し出しも対象外となることが一般的です。また、貸し出し期間は数日間と定められており、数に限りがあるため、事前に予約が必要な場合が多いです。利用を希望する場合は、まず、お住まいの自治体のウェブサイトで、制度の有無や、対象となる蜂の種類、貸し出しの条件などを確認し、担当部署(環境課など)に電話で問い合わせて、手続きを進めるのが良いでしょう。市役所は、直接手を下してはくれませんが、私たちが安全に戦うための「武器・防具」を提供してくれる、頼もしい後方支援部隊となってくれるのです。
市役所の蜂駆除サポート①防護服の無料貸し出し