「スズメバチの巣は、危険だから市役所が無料で駆除してくれる」。これは、多くの人が抱く、最も代表的な「誤解」の一つです。前述の通り、たとえ相手が最も危険なスズメバチであっても、その巣が個人の敷地内にある限り、原則として市役所が直接駆除に乗り出すことはありません。しかし、これには「例外」が存在します。それは、そのスズメバチの巣の存在が、個人の財産管理の問題を超えて、「公共の安全に対する、差し迫った脅威」となっていると判断された場合です。例えば、巣が通学路に面した場所にあり、登下校中の子供たちが刺される危険性が極めて高い、あるいは、巣が家の玄関の真上にあり、住人が家に出入りすることさえ困難になっている、といった、緊急性が非常に高いケースです。このような状況では、市役所は、単なる相談窓口としてではなく、より積極的な対応を取ることがあります。その対応とは、市役所自身が駆除部隊を派遣するというよりは、地域の「消防署」と連携し、対応を要請するという形が一般的です。消防署の本来の任務は、火災の消火や救急・救助活動ですが、蜂によって人の生命に直接的な危険が及んでいる、あるいはその可能性が極めて高いと判断された場合には、「人命救助活動」の一環として、蜂の巣の駆除に出動することがあるのです。ただし、これも、全てのケースで消防署が対応してくれるわけではありません。あくまで、他に手段がなく、危険が差し迫っている場合に限られます。消防署が駆除を行った場合、その費用は公費で賄われるため、個人負担は発生しません。これが、「スズメバチの巣は無料で駆除してもらえる」という話の、元になっていると考えられます。しかし、これは、あくまで最終手段であり、例外的な措置です。スズメバチの巣を見つけたからといって、いきなり119番に通報するのは、緊急性の低い出動を強いることになり、本当に助けを必要としている人のための活動を妨げることにもなりかねません。まずは、市役所の担当部署に冷静に状況を説明し、その指示を仰ぐ。それが、社会の一員としての、正しい行動と言えるでしょう。
スズメバチの巣は市役所も緊急対応?消防署との連携