生ゴミを堆肥に変え、家庭菜園やガーデニングに活かす「コンポスト」。環境に優しく、持続可能な暮らしを目指す人々にとって、非常に魅力的な取り組みです。しかし、そのコンポストの蓋を開けた瞬間、おびただしい数のハエの幼虫(ウジ)がうごめいているのを見つけてしまい、そのプロジェクトを挫折してしまった、という苦い経験を持つ方も少なくありません。コンポストからウジが湧くのは、果たして「失敗」のサインなのでしょうか。結論から言うと、必ずしもそうとは言えません。むしろ、それは、コンポスト内の「分解プロセスが、活発に進んでいる証拠」と捉えることもできるのです。コンポストは、微生物の働きによって、生ゴミなどの有機物を分解し、堆肥化させる仕組みです。この分解の過程で、熱と、独特の発酵臭が発生します。そして、この匂いに、ハエの仲間である「アメリカミズアブ」などが引き寄せられ、産卵します。孵化した幼虫は、コンポスト内の生ゴミを猛烈な勢いで食べ、その分解をさらに加速させてくれる、ある意味で「分解のスペシャリスト」なのです。彼らは、不衛生なイエバエとは異なり、病原菌を媒介するリスクも低いとされています。しかし、そうは言っても、ウジが大量にいる光景が、決して気持ちの良いものではないことは事実です。もし、その数を減らしたいのであれば、コンポストの管理方法を少し見直す必要があります。ウジが発生する最大の原因は、コンポスト内の「水分過多」と、「生ゴミの露出」です。対策として、まず、生ゴミを入れたら、その都度、米ぬかや、乾いた落ち葉、あるいは籾殻などを上から被せ、生ゴミが見えないように「蓋」をします。これにより、ハエが産卵するのを物理的に防ぎ、匂いを抑制することができます。また、コンポスト内の水分が多すぎると感じたら、乾いた土や、細かくした段ボールなどを混ぜ込み、水分量を調整しましょう。コンポストとの付き合いは、自然のサイクルとの対話です。ウジの存在を一方的に敵視するのではなく、彼らが現れた原因を考え、環境を適切にコントロールしていくこと。それが、上手に堆肥作りを成功させるための、鍵となるのです。